Saturday, March 24, 2012

あぶない、あぶない。

シャーロット・アマリーの湾内に錨を下ろして3日目。2日後のチャーターのため、午後一番に一時間程離れたレッド・フックへ出発するつもりで少しのんびりしていた。すると、私達の船のすぐ脇を通っていくヨットがいる。もしかして私達の前方にアンカリングするつもりかとちょっと不安になった。と言うのは私達はマリーナと白いブイで区切られたアンカリングエリアの一番前に錨を下ろしたので、その前というのは通常は考えられない。しかーし、その考えられない事に幾度も遭遇していれば、俄然警戒心も働く。

見ると、単胴船に乗っているのはおじさんひとりだけ。シングルハンドか。それならスペースが無いという状況を見極めて、別の場所に移るだろうと思った。それでも、彼の船から目は離さずにいた。すると、そのまま前進して私達のアンカーのある、まさにその場所あたりに錨を下ろしている!すぐにボブを呼んだ。

キャビンから上がってきたボブは、信じられないという顔で、「ヘーイ!そこには僕たちのアンカーがあるからダメだよ!!」と叫んだ。おじさんは、耳に手を当て、ハーッ?という顔。耳が遠いのか?もういちど同じように説明すると、分かったというそぶりを見せた。

ところが、すぐにアンカーを引き上げるかと思いきや、逆にもっとチェーンを下ろして行く。全くもって信じ難い。そして、あろう事か(いや、この場合は予想通り)、彼の船が私達の船のすぐ目の前に迫って来た。ボブはすぐにフェンダーを取りに行ったが、私は既に船首にいたので、素手で彼の船を押し返す準備をした。一瞬、力が足りなくて、そのまま激突されてしまうのではという思いが頭をよぎりビクッとした。もう猶予がない。身体を少し乗り出し、近づいた船を両手で力一杯押し返した。その時、やっと気がついたおじさんが運転席に戻りギアを前進させたので、あわやという所で衝突は免れた。その瞬間、ホッとするより先に一気に怒りが爆発し、「いったい何してるのよ!」と怒鳴りつけてしまった。雨が降る中、おじさんの行動にしばられ、濡れて少し寒かったのも影響していたかも知れない。

後から考えるに、そのおじさん(というよりおじいさん)は、アルツハイマーにかかり始めているのではと思った。何故なら、そのあと1時間近くかかって、あっちこっちと適当でない場所に5、6回アンカリングし直していたからだ。私達の隣の船も自分の船の前に錨を下ろされてびっくりしたらしく、自分のチェーンをもっと長く下ろして後ずさっていた。ちょっとおかしなおじさん、回りを恐怖に陥れた後、それでも何とか落ち着いてくれた。見ている私も疲れてしまった。ボブはさすがに男だ。事の成り行きは気にせずチャーターの準備に忙しい。私はそうはいかない。結末が気になってしょうがないのだ。それにしても、危なかったなぁー。でも、危険を阻止したのは私の野次馬根性のお陰だと思っている。

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